ラ・トゥール「女占い師」
１６３０年
ラ・トウールが活躍した17世紀のヨーロッパは、戦争や疫病の流行が続き、人々は絶え間ない不安にさいなまれていた。
そんな時代を象徴するかのように、ラ・トウールはしばしば、人をだますことを意に介さない怪しげな人物を描く。
画面右の老女が、女占い師。右手にもつコインは、占いの道具だろう。彼女の言葉に気をとられている青年は、自分の左右にいる若い女性が装身具や財布を盗もうとしているのに気づかない。必死に演技する老女、うぶな青年、緊張しつつもカモをばかにしている若い女。それぞれの心理が、視線によってたくみに描き分けられている。
