ターナー「雨、蒸気、スピード、グレートウエスタン鉄道」
1844年
本作は絵画史上はじめて、「速度」を描いた絵といわれている。
ターナーは、実際にこの列車に乗り込み、降りしきる雨のなか、窓から身を乗り出して10分以上を過ごした。そして座席に戻ると、今見た光景と感覚を脳裏に刻みつけるように目を閉じたという。
極端な遠近法で描かれた蒸気機関車と鉄路。さらに、両者を画面奥にいくほど周囲と一体化して描き、手前にくるほど具体的な形で描くことで、靄のなかから飛び出してきたような「速度」感をたくみに表現している。
列車の前方に描かれた必死に逃げる野兎にも、同様の「速度」感が表されている。