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モネ「エプト川の曲がり角」



 悲しみの村ヴェトゥイユを離れたモネは,一時パリ寄りのポワッシーに仮住まいをした後,1883年,今度はヴェトゥイユよりも一肩セーヌの下流に位置するジヴェルニーに家を借りた。
エプト川は,その村はずれからゆっくりとセーヌに流れ込む支流のひとつで,この川岸でモネは,燦燦と降る光のシャワーを浴びているポプラの並木を見たのである。
「自分がこれほど生き生きと感じているものを,はっきりと表わせるようになりたい」。モネが描く目的はこれほど簡単なものであったが,その実践には,神憑り的な観察眼と手練とが必要だったのである。
信じ難い敏捷さをもつ筆の動きと色彩の対照とが,樹葉の表裏に振動する光をとらえ,ポプラを生きたものとする。これはやはり,無常な時の経過のなかの一瞬を定着させたと説明されるような固定的な世界ではあり得ない。
むしろ往還する時間,再来する感覚的時間に対する強い信頼を表明している宗教的ともいえる世界なのである。


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