仕掛けられた遊び心(1)   

この人、ヤン・ファン・エイクの絵にはいつも驚かされる。とにかく緻密と言おうか細密と言おうか画面の端からは端まで極めて詳細に描かれている。

その事実よりもその精神の強靭さに恐れ入ってしまう。一点の作品を仕上げるのにどれほどの時間を費やすのか想像すると並の人間にはとてもまねができない。

そのうえ、作品にはちょっとした仕掛けがあるのだ。例えば下の作品を観てみよう。この作品は「アルノルフィーニ夫妻の肖像」という二人の結婚の誓いの場面を描いたものだが

中央の奥の壁に丸い鏡がある

この鏡にはターバンを巻いた二人の人物が写っている。どうやら結婚の立会人らしい。そして鏡の上の壁には「ヤン・ファン・エイクここにあり、1432年」と書かれている。おそらくファン・エイク自身も立会人の一人として出席していたのでしょう。

一本だけともされたシャンデリアのろうそく、無造作に床に脱ぎ捨てられたサンダル、そして犬。これらはキリスト教における婚姻や貞節などを意味するものであると言われています。

西洋絵画美術館「アルノルフィーニ夫妻の肖像」

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