月別アーカイブ: 2015年12月

ラファエロ前派ってどういう意味?

19世紀中頃までのイギリスの画壇の中心、特に王立アカデミーなどはイタリア・ルネサンスの巨匠ラファエロなどを模範としていました。題材もギリシャ神話やローマ神話、または聖書などから選ばれていました。しかし、そうした古い体制に不満を持ち異を唱えた若い画家たちによってラファエロ以前、ルネサンス初期の自由で素直な表現に戻ろうと考え「ラファエロ前派」が生まれました。(ルネサンス初期の作品が自由で素直な表現とは一概には言えない気がしますが)

その中心になったのがミレイ、ハント、ロセッティの三人でした。彼らはシェークスピアなどイギリス文学や詩、そして家族の日常の風景を描き、それらは多くの人の支持を受けました。

oheria1 ミレイ 「オフェリア」

しかし、「王立アカデミー」を批判していた「ラファエロ前派」であったにも関わらづミレイがその準会員に選ばれたのを機に「ラファエロ前派」は内輪もめにより解散となりました。結局このグループは結成後数年で消えてしまったのです。

「ラファエロ前派」がめざす絵画芸術というものがいったいどういうものであったのかいろいろ論評はあるものの、しかし、明確な定義などがあったわけでもなく単に既存の勢力批判に集中していたのではないでしょうか。いつに時代も若い人たちは古い体制には批判的になります。ミレイも1896年には「王立アカデミー」の会長となり間もなく世を去りました。

haru1 ミレイ 「春」

ミレイの作品はこちらから

 

ボッティチェリってどんな人?

ボッティチェリは1444年、イタリアのフィレンツエ生まれ。本名はサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペービ。ボッティチェリとは通称で「小さな樽」と言い、樽のように太っていた長兄のあだ名であったのですが、それを受け継いだということらしいです。

ボッティチェリは当時のフィレンツエの支配者メディチ家の庇護を受けることによって一躍画壇の寵児となり次々と名作を作り出していきました。

そのメディチ家支配によるフィレンツエ・ルネサンス華やかかりしころの作品が「プリマヴェーラ」(春)と「ヴィーナスの誕生」です。

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ボッティチェリは陽気な性格で冗談やチョットしたいたづらなどで人々を笑わせ友人も多かったと言われています。また、知識欲も旺盛でメディチ家に集まった知識人とも交流が深く神話や哲学、詩の朗読などに夢中になり、そうしたことが作品の傾向によく表れています。

また、下の作品は「東方三博士の礼拝」ですがメディチ家一族5人をこの作品に描きこんでいます。まるで集団肖像画のようなものです。でもこのアイデアはなかなか面白いですね。

最も右にいてこちらを見ているのがボッティチェリ本人だと言われています。

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ボッティチェリとしてはこうした作品を描くことによってメディチ家一族のご機嫌をとることも必要だったのでしょう。

ボッティチェリの作品

無頼画家カラヴァッジョ

今日はイタリアの画家カラヴァッジョについて書いてみたいと思います。
カラヴァッジョは日本で織田信長が武田信玄と争っているころにイタリアのミラノで生まれました。1571年のことです。
彼は二つの点において有名な画家でもあります。一つは殺人者で無頼漢なこと、もう一つは闇と光の天才画家であったことです。
刀剣を持ち盛り場をうろつき酒に酔い行く先々で乱闘騒ぎを起こし挙句の果てに殺人まで犯してしまう画家は後にも先にも彼一人ぐらいではないでしょうか。しかし一方ではキリストをテーマに光と闇を操る天才画家として名高い画家でもあったのです。kirisutonohobaku
この絵はキリストがローマ兵に捕縛される瞬間を描いた作品です。
画像が暗く小さいため分かりにくいかもしれませんが弟子のユダがキリストに接吻するのを合図に兵士がなだれ込んできた瞬間が描かれています。闇の中にそれぞれの顔が浮かび上がり混乱の様と一人静かなキリストの表情とのコントラストがうまく表現されてます。
こうした闇と光の技法はやがてレンブラントやフェルメールなどに引き継がれてゆきます。
この作品は400年もの間行方不明になっていたものです。アイルランドの修道院で奇跡的に発見されたのですが画面右端の男はカラヴァッジョ自身ではないかと言われています。

日本人はモネが好き(3)

モネと睡蓮

モネといえば「睡蓮」といえるほど多くの作品を残しています。ジヴェルニーに移り住んだ晩年に描いたものです。
数年前、ジヴェルニーのモネの家を見学しましたが、室内の壁には多くの「浮世絵」が飾ってあり当時のジャポニズムの一端を見るようでした。
また、庭の一部の「睡蓮の池」は明らかに日本をイメージしたものの様に思えました。
モネは「睡蓮」の何を描きたかったのでしょうか?それは、睡蓮そのものではなく睡蓮の池の水面に反射して見える別世界のイメージではないでしょうか、一見単調に見えるその風景も季節や時間、その日の天候や気温、周囲を飛び交う虫や小動物の音と匂い、それらがモネの小宇宙となって脳裏にイメージされるのでしょう。まさに印象派の真髄といえます。
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パリ・オランジュリー美術館の「睡蓮の部屋」は圧巻でした。
モネの「睡蓮」を飾るためだけに作られた楕円形の二つ部屋に巨大な作品が壁一面に展示されています。
作品8点による連作です。
自身が作り上げた「睡蓮の池」に魅了され、晩年、精魂こめて描き上げた大作。
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すでに二人目の妻アリスは世を去り、息子ジャンもまた先立ってしまった。自身は白内障を患い、手術で回復したとはいえ苦難の中にあった。
そうした逆境の中、睡蓮の展示を計画し、大作に挑戦したモネの「睡蓮」に対する強い執着心が筆に神の力を与えたといえるでしょう。
しかし、モネ自身もまた自ら計画し夢に見たこの美術館での展示には間に合わず「睡蓮の部屋」が完成する1年前に他界しました。
享年86歳。

日本人はモネが好き(2)

モネと言えば「印象派」という言葉が浮かんできます。
1874年の展覧会に出したモネの作品「印象・日の出」が批評家の間で「最悪の作品」として評判になったことが「印象派」といになっています。
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ある批評家は「なるほど、印象といえば確かに印象のようだが、これなら小学生が描いた絵のほうがまだましだ」と言ったそうです。
しかし、モネの作品の中でこのように書きなぐったように描かれた作品は他には見当たりません。おそらくアカデミズムな批評家たちに一撃を加える目的で描かれたのではないでしょうか。モネは批評家たちの最悪な評価を聞いてほくそ笑んでいたに違いありません。
この展覧会以降モネたちのグループ自ら「印象派」と名乗るようになりましたが、実際にはいろいろなジャンルの画家たちが混じっており今日まで印象派画家といわれる作家はほんの数人でしかありません。
そもそも、「印象派」の定義も大雑把で曖昧なものなのですが、印象派といわれる画家にはモネを筆頭にピサル、シスレー、ルノワールなどがおりますが共通項は全体にやわらかく「季節や風、光や香り」など豊かに感じる作品が多いように思えます。
そのあたりが日本人の感性と符合するのかもしれません。

日本人はモネが好き(1)

どうして日本人はモネが好きなのでしょう?
ルノワール、セザンヌ、ピサロ、シスレー、ゴッホ、ルソーなど印象派画家、ポスト印象派画家の作品が日本人には好まれます。
中でもモネの作品は非常に人気があります。年齢や性別に関係なく日本にはモネのファンが多いように思えます。
モネの作品には風景画が多くどの作品からも爽やかな風を感じます、また、人物も描かれていますがその風景に自然に溶け込み作品全体から初夏の風のように心地よい感触を受けます。
太陽の光と白い雲、そして緑の草樹の間を吹き抜ける爽やかな風、そうしたものが日本人の感性と連動するような気がします。
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「ジャポニズム」とゴッホ

「ここの自然がいつまでも好きなことは今後も変るまい、それはまるで日本美術のようなもので、一度好きになると決して飽きないのと同じだ」
これはゴッホが南フランスのアルルにいたころ弟テオにあてた手紙の中の一部です。南フランスの空気が日本のように新鮮で開放的だとも話しています。もちろんゴッホは日本に行ったこともないわけですから想像上の「日本イメージ」なのですが日本人にとってみればチョット嬉しいような気がします。

 

19世紀後半ヨーロッパにジャポニズムの波が押し寄せた時代にゴッホも浮世絵に熱中し、弟テオと展覧会を開いたこともあるほど日本美術に夢中になりました。
下の作品では「雨を線」で描いています、ヨーロッパ絵画にはないです。
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ゴッホ 日本趣味「雨の大橋」広重の模写

セガンティーニを知っていますか?

セガンティーニという画家をご存じだろうか。美術界ではちょっとマイナーな画家なのでこの名前に馴染みのある方は少ないと思います。
この画家は1858年イタリアのミラノ生まれですが生国のイタリアよりスイスの方が有名な画家なのです。
両親とは幼い時に死に別れ、遠い親せきで幼少期を過ごしたため家族愛には縁遠い少年時代を過ごしました。
それでも天性の才能でしょうかデッサン力はずば抜けていたそうです。そのため絵の教師などの仕事にも恵まれ十分な収入もあったそうですが金遣いの才能はなっかったようで借金がかさみ、その借金取りから逃げるようにスイスにやってきたとのことです。
彼の作品の多くはそのスイスのアルプスを題材に描かれています。
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どうです? 澄んだ青空と穏やかで明るい光、そして新鮮で草の香りがする空気、なんと爽やかな作品ではないですか。
点描画の技法なども積極的に取り入れ柔らかな画質が観る者の気持ちをさらに爽やかにするように思えます。